本記事では、従業員を雇い入れるに際しての雇用区分をはじめとして、労働基準法(以下「労基法」という。)15条の労働条件明示義務のポイントから、雇用契約書・労働条件通知書の必須項目等を、わかりやすく解説します。
従業員の雇用区分について
雇用契約は、雇用契約期間の有無によって大きく 「無期雇用」 と 「有期雇用」 に分けられます。それぞれの特徴は以下のとおりです。
無期雇用
無期雇用とは、雇用契約期間の定めがない長期雇用を前提とする雇用形態であり、いわゆる「正社員」の雇用形態となります。使用者による従業員の解雇が厳しく制限されている日本では、実務上は、3ヶ月ないし6ヶ月の試用期間(従業員の能力・適性を観察して本採用するか否かを決めるための実験観察期間)を設定することがほとんどです。
有期雇用
有期雇用とは、雇用契約期間があらかじめ定められている長期雇用を前提としない雇用形態(例:「2025年4月1日〜2026年3月31日」)であり、主に契約社員やパート・アルバイトなどで採用される雇用形態となります。雇用契約期間の満了により雇用契約が終了するのが原則となりますが、有期雇用契約が反復更新されるなどして雇止め法理(労働契約法19条)が適用されて雇用の打ち切りに制限が生じることがあります。
雇用契約書と労働条件通知書の相違
雇用契約の締結に当たって、雇用契約書の作成・発行が法的に必須というわけではなく、雇用契約書を締結しない例もよく見られます。しかしながら、労働契約の締結の時点で賃金や労働時間など労働条件を明示することが罰則付きで法的に義務付けられており、労働条件の明示は必須となります(労基法15条1項、同施行規則5条1項)。実務上は、雇用契約書及び労働条件通知書の双方を兼ねるものとして「雇用契約書兼労働条件通知書」を作成することも見られます。
| 項目 | 雇用契約書 | 労働条件通知書 |
| 作成目的 | 双方の合意内容の明文化 | 会社による労働条件の通知 |
| 署名・記名押印 | 会社・従業員双方 | 会社の一方的な通知 |
| 法的位置付け | 労働契約成立の証拠 | 労基法に基づく法的義務文書 |
| 罰則 | なし | 30万円以下の罰金 |
無期雇用・有期雇用の労働条件通知書の雛形
厚生労働省のウェブサイト「主要様式ダウンロードコーナー」では、無期雇用・有期雇用のいずれにも対応できる雛形として労働条件通知書(一般労働者用;常用、有期雇用型)を公開されています。その他、短時間労働者用(パートタイマー・アルバイト)、派遣労働者用などのさまざまな雇用形態に対応したモデル労働条件通知書も公開されており、こちらをベースに適宜加筆等の修正をすることが効率的です。
雇用契約書(兼労働条件通知書)の作成に当たっては、上記の厚生労働省の雛形をベースにしていれば網羅されているとは思われますが、労基法15条1項・同施行規則5条1項に基づく以下の労働条件明示事項が網羅されているかをチェックする必要があります。
実務上は、就業規則上の関係条項名を網羅的に示すことで労働条件の具体的な記載に代えることが多く、この場合、労働条件通知書とともに就業規則も併せて交付することになります(行政通達基発第45号第2「労働条件の明示(法第十五条第一項関係)」)。
絶対的明示事項
絶対的明示事項とは、労働者の希望の有無や雇用形態を問わず、必ず明示しなければならないもので、原則として書面の交付が義務付けられている項目(「昇給に関する事項」を除く。)をいいます(労基法15条1項、同施行規則5条1項)。
ただし、労働者が希望する場合には、書面の交付に代えて、FAXや電子メール、SNSなどによる明示も可能です(出力して書面を作成できるものに限られる。)。
- 労働契約の期間
- (有期労働契約を締結する場合)有期労働契約を更新する場合の基準、更新上限(通算契約期間又は更新回数の上限)の有無と内容、無期転換申込機会・無期転換後の労働条件
- 就業の場所及び従業すべき業務、並びに、就業場所・業務の変更の範囲
- 始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項
- 賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
前記の労働条件に加えて、パートタイマーなどの短時間・有期雇用労働者の雇い入れに際しては、次の労働条件についても書面の交付により明示することが求められます(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律6条1項、同施行規則2条1項)。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
相対的明示事項
相対的明示事項とは、会社に定めがある場合にのみ明示の必要があるもので、書面の交付は必要ありません。これらの制度を設けない場合は明示する必要はありません。
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期
- 臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額
- 労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
- 安全及び衛生
- 職業訓練
- 災害補償及び業務外の傷病扶助
- 表彰及び制裁
- 休職
参考:厚生労働省「採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。」、「平成31年4月から、FAX・メール・SNS等での労働条件の確認ができるようになります。」

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